ついにリリースとなりましたね!
スピッツの16thアルバム『見っけ』。
朝ドラ主題歌に抜擢され、2010年代ではダントツの知名度を獲得した先行シングル「優しいあの子」が収録されています。
3年間隔でのアルバムリリースというルーティンは今作でも継続していて、キャリアの長さを考えると “安定” の道をとっくに選んでいてもおかしくはないと思うのですが、そんな予想は今作を聴いて見事に裏切られましたね。
まず思ったのは…
すごいよスピッツ、ロックだよ!
そして記事を書こうと考えていたら真っ先に浮かんできたのは…
ここに来て、ますます若返っているよね!?
という感想。あまりにもざっくりしすぎているけども…
ここ数作と同様にコンパクトな曲が多く、ストリングスも一切使っておらずバンドサウンドで勝負、それなりに幅広い曲調でポップなメロディーを聴かせる…というアルバム全体の方向性はこれまでと変わっていないので、ともすればマンネリの気配が感じられてもおかしくはないと思います。
ですが! 今作から感じられるどこまでも瑞々しい空気感はスピッツがキャリア30年超のベテランバンドであることを忘れてしまうほど。
もはや若手ロックバンドの最新作なのではないかと錯覚してしまいます(同日リリースとなったOfficial髭男dismの『Traveler』の方がいい意味で貫禄のあるサウンドなので尚更)。
唯一無二な4人のバンドサウンドもマサムネさんの歌もとにかく伸び伸び、生き生きとしていて力強いため、聴いていて気持ちいいことこの上ないです。
この鮮度を30年以上保ちながら(むしろもっと研ぎ澄まされて)新作を出し続けるスピッツには本当に頭が下がりますね。
ここまでの感想は3年前と同じようなことを言っている気もするけれど、比較的長いインターバルでアルバムを出していながら毎回リスナーにそう思わせてくれるのがすごい。
また、エッジの効いたバンドサウンドに反して音圧がそこまで過剰ではないところも好感触です。
『スーベニア』以降の迫力満点サウンドもいいけれど、このくらいの塩梅だと聴き疲れしないですね。
全体的にコンパクトでありながら濃密な、何度も聴きたくなる快作です。
それでは全曲感想へまいりましょう!
全曲感想
1. 見っけ
NTT東日本のCMソングとしてオンエア中のタイトルチューン。
シンセの音で始まり、続いてエレキギターが入ってくるイントロがアルバムへの期待を煽ります。
重厚なバンドサウンドが響き渡るポップロックナンバーで、淡々と同じメロを繰り返すシンプルな構成ながら、かなりキャッチー。
1曲目はこの曲以外あり得ないと思えるだけのインパクトがありますし、今作が紛うことなき “ロックバンド” のアルバムであることを告げるプロローグです。
2. 優しいあの子
42ndシングル。NHK連続テレビ小説『なつぞら』主題歌。
北海道を舞台にしたタイアップ先のドラマを想起させる、雄大でスケール感のあるポップソング。
ほぼパブリックイメージそのままなスピッツの王道を聴かせる名曲で、耳障りも実に良いのですが、(誤解を恐れずに言うと)まさかこれがアルバム内で一番 “なんてことのない曲” になろうとは1周聴き終えるまでは知る由もなかったです…。
間奏で三輪さんによるギターソロがグイグイ入ってくるところにロックバンドとしての意地が感じられていい!
3. ありがとさん
アルバムリード曲のひとつなだけあって、とても聴きやすくキャッチーなナンバー。
サビ頭の展開は「恋のはじまり」を彷彿とさせますね。
「優しいあの子」やこの曲でスピッツを聴こうと思ったリスナーが、今作や過去のアルバムを聴いてパブリックイメージ(優しい/おとなしい/健全で爽やか etc.)はあくまで一側面に過ぎなかったとばかりにぶったまげるのを想像するだけで楽しいです笑
とはいえこの曲もバンドサウンドが激しいんですけどね。
ポップなメロディーとのコンビネーションがやはり絶妙です。
4. ラジオデイズ
マサムネさんは2018年からラジオ番組『SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記』でパーソナリティを務めており、古今東西さまざまなジャンルの音楽を紹介し続けているのですが、この曲はそんなラジオや流れる音楽への想いを綴ったような歌詞が印象的なロックナンバー。
《遠い国の音楽 多分空も飛べる》という一節にあの代表曲のフレーズが思い切り含まれていてニヤッとさせられます。
イントロからものすごい疾走感で、若手のロックバンドにも負けない勢いを感じます。
5. 花と虫
レトロな質感のギターフレーズが目立ちますが、こちらも疾走感のあるロックナンバー。
ここまでの5曲、まるでライブ会場で聴いているかのような高揚感にアガります。
よく歌詞を読むと、“僕”の想いをひたすら綴ることに終始していてかなり内省的であることに気付き、曲調とのギャップも魅力的。
一聴しただけでかなり心を掴まれる曲です。
6. ブービー
ここまでのアッパーな流れを一旦トーンダウンさせるようなスローな楽曲。
タイトルは直訳で “最下位” という意味なのでしょうか?
割とシンプルという意味では前作『醒めない』の「モニャモニャ」ポジションと思われますが、不覚にもすごくジーンときますね…。
間奏の優しいピアノの調べとコーラスが絶品。
7. 快速
タイトルの通り、再び勢いを増すバンドサウンドに身を委ねたくなるロックナンバー。
熱い曲でありながらもどこかひんやりとした空気感が『RAY』の頃のBUMP OF CHICKENを彷彿とさせますね。
タカハシマイさん(Czecho No Republic) のコーラスが良い味を出しています。
8. YM71D
タイトルは「やめないで」と読む。
イントロのカッティングに山下達郎を感じさせる、シティポップっぽいミドルナンバー。
テンポがゆったりでやや地味目ではありますが、こんな曲もやるんだなという意外性に心躍ります。
9. はぐれ狼
再びライブ映えしそうなナンバーが登場。
《擬態》というフレーズのワクワク感、Mr.Childrenのファンならわかるよね!
この手の曲調はスピッツが好きなら絶対に外さないと思います。
イントロが「点と点」にすごく似ていると感じるのですが、セルフオマージュなのでしょうか。
10. まがった僕のしっぽ
民族音楽のような雰囲気を醸し出すフルートの音色が良い味出しているな…流れるようなメロディーが気持ちいいな…と思って浸っていたら、まさかの転調で激しいロックンロールに。
最高にプログレッシブです!
こういう意外性のある曲が存在することでアルバム全体の聴き応えがグッと増しているように思いますし、個人的にも今作の中で特に印象深い曲のひとつです。
11. 初夏の日
京都を舞台にしたノスタルジックなスローバラード。
弾き語りで始まる冒頭のメロディーがビートルズ「Yesterday」っぽいですが、バンドがインすると一気にスピッツ節に。
「魚」を彷彿とさせるメロやアレンジが一昔前のスピッツっぽいなと思っていたら、本当にかなり前から存在していた曲なのですね。
満を持しての音源化ということで、コアなファンほど感慨もひとしおではないでしょうか。
初出の新曲として聴いてもかなり心に残りますけどね。
12. ヤマブキ
「君は太陽」を思わせる疾走感全開のロックナンバー。
ファンクラブ会員限定ツアーで先行披露されていたためか、編曲に亀田誠治氏は関与しておらず、スピッツとクジヒロコ氏の共同名義です。
力強い!キャッチーオブキャッチー!
この曲で本編が締め括られるのが実にたまらないです。
まだまだこれからのスピッツも楽しみ、そう思わせてくれる素晴らしいラストトラックですね。
13. ブランケット (BONUS TRACK)
2017年に平井堅に提供した曲のセルフカバー。
平井堅ver.のアレンジは亀田さんが手掛けていましたが、こちらはスピッツの単独名義。
これまたいい曲で、限定盤でしか聴けないのは非常にもったいない…。
何度も聴いていくと、この曲も含めた終盤4曲の流れが今作のハイライトだなと思うのです。
素晴らしいアルバムをご馳走さまでした!
いかがでしたか?
既に聴かれた皆さまにとっては最高のアルバムではないでしょうか?
でも個人的には今作が名盤なのかどうか、まだジャッジできそうにないです。
このアルバムがこれからの僕の人生とともにどのように思い出に残り、大切な作品へと変わっていくのか。
とにかく今はそれが楽しみで仕方ありません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


