メニュー
アーカイブ

重松清「ビタミンF」(書籍感想)

  • URLをコピーしました!

久々の書籍感想です。
今回取り上げるのは重松清の名作「ビタミンF」。
ネタバレ回避のため細部にはあまり触れませんが、ご了承ください。

重松清「ビタミンF」

新潮文庫
2003年7月1日(文庫版)

紹介

38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。
40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。
36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。
一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。
「また、がんばってみるか――」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。直木賞受賞作。

(背表紙より引用)

感想

数多くの名作を輩出し続ける実力派作家・重松清による、01年に直木賞を受賞した“名作”の誉れ高い短編集で、7作品によって構成されている。

短編7作の共通項は妻子持ちのアラフォーサラリーマンの視点で描かれているというところ。
一般読者の想い浮かべる重松清の作品は“心暖まるホームドラマ”というイメージが先行しがちだが、今作に収められたモノは全て現実に起こる諸問題から決して目を逸らさず、生々しい描写を随所に盛り込むことでリアリティ溢れる作品に仕上がっている。
いじめ問題をテーマにした「セッちゃん」はとりわけ強烈なインパクトを放っている衝撃作だ。
そのため全体的にやや陰があるというか取っつきにくいものも中にはあるんだけど、“負の要素”も隠さずにさらけ出すことでこの作品全体の深みが増している気がする。
これはポップミュージックの歌詞にも言えることだけど、毒にも薬にもならない綺麗事を並べたところで何も得られるものは無いと思うし、今作をリアリティ満載の作風に仕上げた重松さんの覚悟には感服するほかない。

とはいえ今作にも彼の作品の醍醐味である暖かい要素は忘れておらず、読み進めるにつれて前向きな気持ちになれるだろうし、読み終わった時には明日への活力が湧いてくるはずだ。
やはり直木賞受賞作の名は伊達ではない、渾身の1作と言っていいだろう。
何度読み返しても胸が熱くなり、その度に紛れもない名作だと確信できる。
まだまだ先の長い人生、これからどんな苦難や歓びが待ち受けているかは分からないが、今作によって学んだ数々の教訓を人生のバイブルとして大切にし、未来へと歩んでいけたらと思っている。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次