スピッツの8thアルバム『フェイクファー』の感想記事です。
収録曲
- エトランゼ
- センチメンタル
- 冷たい頬
- 運命の人 (Album Version)
- 仲良し
- 楓
- スーパーノヴァ
- ただ春を待つ
- 謝々!
- ウィリー
- スカーレット (Album Mix)
- フェイクファー
基本情報
▪1998年3月25日発売
▪ポリドール
▪初登場1位
スピッツと春の親和性
今回の感想記事はスピッツのアルバムです。
この記事を投稿した2月上旬は立春も過ぎ、日が長くなってきて少しずつ春の気配を感じるようになりつつありますが、僕はそんな時季にきまってスピッツが聴きたくなるのです。
彼らの楽曲の持つ切なさやノスタルジアといった感傷が、微睡んでしまうほど心地良いんだけどどこか心許ない、そんな春の空気感にピッタリな気がするんですよね。
異世界を感じさせるような非日常感を醸し出している楽曲群は、どこかユーミンの作品にも通ずるものがあると思います。
それは、今回取り上げる『フェイクファー』も例外ではありません。
試行錯誤の末に生まれたアルバム
スピッツ8枚目のオリジナルアルバム『フェイクファー』は、ブレイク期を支えたプロデューサーの笹路正徳氏を離れ、3rd『惑星のかけら』以来のセルフプロデュースでの制作となりました。
共同アレンジャーにはカーネーションの棚谷祐一氏を招き、これまでとは大きく異なるサウンドメイキングが行われたといいます。
笹路プロデュース期はあまりバンドのソリッドな部分を主張させず、時には装飾音も積極的に入れるなど割とポップな印象が強かった気がします。
それに対し今作ではギターリフに凝り、冒頭の「センチメンタル」に象徴されるようなメンバー4人の奏でるバンドサウンドの力強さを押し出した曲が多く収められました。これは聴き応え抜群です。
とはいえ「冷たい頬」や「仲良し」「スカーレット」といった従来の路線に近いポップスの存在感も大きく、全体的に静と動が無造作に入り乱れている印象が強く残ります。
実際、メンバーにとっての理想の音作りに対する試行錯誤は今作の頃がピークだったようで、そうした迷いや苦悩がこのアルバムのどことなく切ない空気感を生んでいるのかと思うと、グッとくるものがあります。
ただ、レゲエ調の「ただ春を待つ」やゴスペル風のブラスポップ「謝々!」、スピッツを代表する本格派の名バラード「楓」など、セルフプロデュースならではの新たな局面をみせたような曲もあり、全体を通してバラエティ豊かなのであまり暗いアルバムには聴こえないのですが、幾分とっ散らかっている感じが迷いの表れなのかなとは思いますね。
表題曲「フェイクファー」の魅力
このアルバムの魅力はなんといっても、最後を飾るタイトルチューン「フェイクファー」に集約されています。
従来のメロディアスさと変化を示唆するようなロックサウンドが融合した、この時期ならではの楽曲です。
間奏のギターソロがすべてを物語ってくれていますが、この曲の持つ儚さというか、聴いていて泣きそうになるくらいの寂寥感はもはや…。
初めて映像作品に残ったライブビデオ『THE GREAT JAMBOREE 2014 “FESTIVARENA”』のテイクも素晴らしかったですよね。
文句のつけようがないラストであり、筆舌に尽くし難い珠玉の名曲だと思います。
最後に
いやはや、素晴らしすぎるアルバムです…
あれこれ言葉で表現するのも憚られるようなスピッツサウンドの魅力がぎっしりと詰まっていますね。
特にこのアルバムは春の必携盤として、これから先もずっと聴き続けるんだろうなと思います。
何度聴いてもたまらなく愛おしい、この一言に尽きるアルバムです。


