ASKAの6thアルバム『SCENE Ⅲ』の感想記事です。
収録曲
- birth
- good time (album ver.)
- 愛温計
- walking around the Xmas
- 心に花の咲く方へ (album ver.)
- 君の好きだった歌へのプロローグ
- 背中で聞こえるユーモレスク
- loop (“birth” reconstructive mix)
- 抱き合いし恋人
基本情報
▪2005年11月23日発売
▪ユニバーサル
▪初登場6位
肌寒くなると聴きたくなる…
今回は久しぶりのアルバム紹介です。
正直取り上げたいアルバムは山のようにあるのですが、ここ最近は「やた散歩」シリーズがブログのメインコンテンツになりつつあり、気付いたら旧作アルバム感想の更新が半年以上滞る事態となりました…汗
そんなこんなで今回取り上げるのはASKAさんのソロアルバム6作目。
詳しくは次項で述べますが、このアルバムからはそこはかとなく冬の匂いを感じるんですよね。
この記事を書いている時点ではまだ10月半ばですが、少し肌寒くなるとこの『SCENE Ⅲ』が無性に聴きたくなるんです。
過去の『SCENE』2作との違い
この『SCENE Ⅲ』は、ソロアルバムでは最大ヒットとなった “Ⅱ” を含む『SCENE』シリーズの3作目に位置付けられていて、前2作と同様にバラード主体で構成されています。
ところが!前2作とは趣旨が異なる部分もいくつかあります。
その最大のポイントとして、他歌手への提供曲のセルフカバーが今作にはまったく入っていないんです。
95年に黒田有紀さんに提供した「cry」という楽曲は今作の前後である00年, 05-06年の各ソロツアーで演奏しているものの、この時点ではスタジオ音源にはなっていません。
もうひとつは作風の観点から。
88年の『SCENE』は歌謡テイストを、ソロアルバムでは最大ヒットとなった91年の『SCENE Ⅱ』はもうちょいポップスに傾いた形でのバラード路線をそれぞれ押し出していたわけですが、なんと今作は古き良きアメリカ音楽をコンセプトに、映画音楽やジャズのテイストを強調した意欲作。
同じバラードといえども3作で見事に方向性が分かれましたが、このカラーの違いはなかなかに面白くて聴き応えがあります。
ポール・マッカートニーも時代を越えて『McCartney』シリーズを3作にわたって発表してきましたが、特段テーマを絞り込んで制作しているわけでもないようですし。
ASKAソロで一番好きなアルバム
さてそんな本作ですが、個人的にはASKAのソロアルバムでは一番好きな作品になるかなと。
絶頂期のパワーみなぎる『NEVER END』や事件前後の渾身の力作『SCRAMBLE』『Too many people』など、パッと思いついただけでも文句なしの名盤がこれだけ並ぶ中、それらとは違う方向性なだけに最高傑作に挙げるのもいささか憚られますが、ここ数年の個人的な好みでは断トツで『SCENE Ⅲ』がイイな…となりますね。
とはいえ今作の良さを心から実感できたのはここ2~3年の話で、洋楽のポップスやジャズを自発的に聴くようになったことが大きなキッカケなんです。
それが無ければ、感想を書く際にもはや定型文のような感覚で使っている “地味だけど味わい深い佳作…” の一言で片付けてしまっていたかもしれません。
次第に洋楽を齧りだすと、J-POPの聴き方もこれまでとは大きく変わってくるから面白いよなと思いますね。
クラシカルなアメリカンミュージックの世界をASKAさんとともに
またしても逸れましたが、アルバムの内容に戻ります。
確かに今作の1曲1曲はどれも歴代トップクラスの大名曲とは言い難いものの、アベレージが非常に高く、通して聴いた時のトータルでの満足度・幸福感は他の追随を許さないと実感します。
この時期のASKAさんは歌詞を書くのにかなり難儀していたようで、曲数はかなり少ない(リミックスとインストを除くと7曲とほぼミニアルバム)ですが、バラードの多さを考慮するとダレずに聴けるのも高ポイントです。
1曲目「birth」はジャズテイストのアレンジにラテンのようなリズム感、松井五郎さんと本人による輪廻転生をテーマにした歌詞が融合した斬新な楽曲。
バラード調といいつつもなかなかの新境地だったのではないでしょうか。攻めていてカッコいい!
既出シングルの「good time」「心に花の咲く方へ」はシンフォニックなリアレンジが施されたアルバムバージョン。
オリジナルよりも切なさと深みが増していて聴くたびに圧倒されますし、断然こちらのほうが素晴らしいです。
ちなみに2曲ともASKAさん本人の評価が高い楽曲ですね。
「愛温計」はやはり今作の白眉。
当時「はじまりはいつも雨」の続編としてプロモーションされていたみたいですが(実際に間奏のスキャットや終盤のメロディーは「はじまり~」のフレーズ)、単独でも充分に感涙モノの名曲として成立していると思います。
ストリングスやパーカッションなどの生音をふんだんに使った流麗なサウンドの温かみといったらもう…マイケル・ジャクソン「Ben」を思い起こさせるハートウォーミングな質感といいますか。
個人的にこの手のラブソングが深く沁みることは珍しいですが、聴いていてふと涙が流れそうになる、そんな名曲です。
「walking around the Xmas」はアルバムならではの実験枠(?)というか、ここまでの流れとは大きく異なる曲ですが温かみのあるサウンドメイキングは健在。
なんてったってクリスマスソングなのにウクレレがフィーチャーされているのですから…!
歌詞も含めてなかなかにユニークな楽曲ですが、アルバム全体に通ずる音のぬくもりが僕は大好きです。
「背中で聞こえるユーモレスク」はフランク・シナトラとかその辺りの巨匠の姿が浮かぶようなクラシカルなジャズテイスト。
音数は少なめですが、ピアノやクラリネットの音色が絶品。
これもアルバムならではの小品ですが、大好きな1曲です。
「loop (“birth” reconstructive mix)」は1曲目「birth」のリミックスですが、これが『SCENE』シリーズだとは思えないほど尖ったアプローチで痺れます!
オリジナルよりもラテンの要素が前面に出たスリリングなリアレンジは、初めて聴いた時は数合わせとしか思えない部分もありましたが、聴き込むと非常にカッコいい。
最終曲「抱き合いし恋人」はゴージャスなオーケストラバラード。
まさにナット・キング・コールとか “あの時代” のアメリカンミュージックの良さがよみがえったかのような多幸感に満ちた編曲が素晴らしすぎます!
やはりスケール感のあるサウンドはASKAさんの持ち味が最大限に引き出されますね。
《きっと幸せは ほんのわずかな愛を見逃さないこと》、名フレーズです…!
これ以上ない最高の締めですね。
1曲1曲の感想は以上ですが、とにかくアルバムを最後まで通しで聴いてこそ輝く1作です。
真冬の夕暮れ時に聴くと非常に沁みるので、今年も寒くなったらこのアルバムを引っ提げて独りで感傷に浸りたいなと思います。
それと、またこういう方向性でのオリジナルアルバムも聴いてみたいですね。


