ついにリリースとなりましたね!!Mr.Childrenの21stアルバム『miss you』。
まさかの全曲ノンタイアップ、オール新曲という攻めたプロモーションがなされたアルバムですが、一体どんな内容なのでしょう。
その答えとしてはなんというか…
“バンド感が控えめでポップな要素すらも極力削ぎ落としたアーティスティックな意欲作”
といったところでしょうか。
正直なところ、一聴した段階では洋楽テイストの強いサウンド面の新鮮さにばかり目を奪われ、肝心のメロディーや久しぶりに桜井節全開の歌詞すらもすんなり入ってこない感覚があったのですが、何度も聴いていくうちにアルバムのディープな魅力から抜け出せないほどにハマってしまいました。
前作『SOUNDTRACKS』の系譜を引くスタイリッシュなサウンドメイキングはますます洗練されており、アコースティックでありながら時にブルージーで上質な音像は洋楽のそれ。
過去のオリジナルアルバムとも比較しようがなく、もはやJ-POPの枠組みには収まっていないような印象さえ受けます。
個人的にはこのアルバムのティザーを見た時、ジェイムス・テイラーっぽいオーガニックなサウンドをMr.Childrenの音として聴きたいなと密かに思っていたため、それが叶ったことに嬉しい気持ちでいっぱいでした(が、それ以上にとことん攻めていて度肝を抜かれました…)。
そのジェイムス・テイラーだったり、スティングやらColdplayなど、新旧のさまざまな洋楽に造詣の深い音楽マニアほど楽しめるアルバムかと思います。
ただそれらの代表作以上にキャッチーさを排除している辺り、かなりハードルが高いのも事実かなと。
少なくともMr.ChildrenをJ-POPを代表する国民的ロックバンドとして見なしている大半のファンが一聴して受け入れられるような作風ではなさそうですが、そのぶん何度も聴くほどに深みが増してくることも間違いないです。
今も聴きながらこれを書いているのですが、秋のひんやりとした空気感に恐ろしいほど合いますね…
それでは全曲感想、いってみましょう!
全曲感想
1. I MISS YOU
オープニングを飾るのはアコースティックギターの豊かな音色を生かした上質なフォークナンバー。
個人的には聴いていてコルビー・キャレイを思い出しましたね。
どこか懐かしいような、でもこれまでのMr.Childrenには無いような新鮮な音像が、我々をこのアルバムのディープな世界へと誘ってくれるイントロダクション的1曲です。
その一方で、歌詞を読むと桜井さんのネガティブな本音に満ちていてなかなかにエグいんですよね…。
終盤に出てくる《誰に聴いて欲しくて こんな歌 歌ってる? それが僕らしくて 殺したいくらい嫌いです》とか聴いていてドキッとしますよ…。
2. Fifty’s map ~おとなの地図
アルバムリリース前日にMVとともに先行配信された、実質的なリード曲のひとつ。
この曲が最も従来の “Mr.Children” 的イメージを感じられるような、ポジティブな勢いに溢れたポップチューン。
随所に尾崎豊リスペクトを感じつつも、MVで引用した「くるみ」が30代のミスチルによるほろ苦い人生賛歌だったのに対しこの曲は50代の彼らが描く等身大のアンセムといった印象を受けます。
キャッチーなメロディーと煌びやかなバンドアレンジは今作の全体像を踏まえるとやや浮いている気がしなくもないですが、難解でアーティスティックな作風のアルバムにおいてはこの曲の存在にホッとさせられます。
3. 青いリンゴ
アコースティックなバンドサウンドで淡々と進行していくフォークロック。
ポップに盛り上がる要素を意図的に排除したようなメロディー展開が印象的で、J-POPと洋楽のハイブリッド感を味わえる佳曲だなと思います。
2000年代序盤の安全地帯っぽくもあり、アルバート・ハモンドやジェイムス・テイラーなども彷彿とさせるようなサウンドの無骨さがクセになります。
4. Are you sleeping well without me?
Aメロの出だしから「Prism」の旋律を思い出す、静謐なバラードナンバー。
この曲のタイトルを目にした時、柔らかなエレピの音と温かみのあるメロディーを勝手に想像していたのですが…それは甘かった。
かつてないほどにひんやりとした空気感と、退廃的な歌詞がダークすぎます…
それでも何度か聴いていると味わい深さが感じられるサウンドメイキングは流石の一言。
クレジットをよく見ると、前作『SOUNDTRACKS』制作陣のスティーヴ・フィッツモーリスやサイモン・ヘイルが参加しているみたいですね。
ただこの曲に関してはバンドサウンドではなく、これ以降もその手の曲がちょいちょい出てきますが、そういった部分から桜井和寿のソロアルバムと評するリスナーの感想も納得できるところがあります。
5. LOST
前曲同様に『SOUNDTRACKS』からのスティーヴ・フィッツモーリスら海外勢も参加しており、非常に洗練された欧米のダンスミュージック的ビートを駆使した意欲作。
近年の洋楽のメインストリームにはそこまで明るくないのですが、この曲調だとColdplayを連想しますね。
ピアノとアコースティックギター、そして打ち込みと思われるリズムが気持ちよく絡み合っていて、サビで一気に景色が広がっていくようなエモさが素敵です。
いわゆるサビの強さという意味ではこれもミスチル節だなと思いますし、アルバムの中でも人気曲になり得るポテンシャルを感じます。
6. アート=神の見えざる手
さぁ、問題作のお時間がやってまいりました…! これは攻めすぎていてヤバいやつです。
タイトルを初めてお目にかかった時は、日比谷音楽祭の光景だったり、亀田誠治「カミーユ」(『新美の巨人たち』OP) のような曲調を想像していたもんですから、見事に裏切られましたね。まるっきり違うw
なんというかMr.Childrenとしてはほとんど初めてとなるポエトリーリーディングのアプローチでして、歌モノでは一切ないわけなのですが、詞の内容がここでは迂闊に紹介できないくらいエグいんですよ。犯罪者による供述のような…。
THE BOOM「手紙」やゲスの極み乙女「某東京」なんかがぼんやりと浮かんできますが、正直そんな次元ではないです。
あの「LOVEはじめました」さえも可愛く思えるレベルのカオスさ。それでは伝わりづらいか…。
ここにきて桜井さんの詞がアグレッシブな方向性に回帰してきたことはアルバム全体としての傾向ですが、これこそがその最たるトラックです。
少しでも気になった皆さん、ぜひアルバムを買ってこの詞に刮目すべし。ぶっ飛びますんで。
7. 雨の日のパレード
前曲のカオスさをクールダウンさせる役割を持ったシティポップテイストのメロウな1曲。
近年のKIRINJIだったり、『POCKET MUSIC』以降の山下達郎などが方向性としては近いですかね。
タイトルのような華やかさは皆無ですが、地味ながらもゆったりと浸れる佳作です。
8. Party is over
まさかの弾き語り。とうとう明確にバンド不参加ですw
しかしながらかの「Starting Over」を思わせる非常にフックの強いメロディーが展開しており、編曲を派手に行えばいつものエモーショナルなミスチル節にもなり得た気がします。
攻めの姿勢もここまでくると清々しいですが、こういったシンプルの極致にもめちゃくちゃ味わいがありますね。
“バーボンソーダ”、“Party is over”、“多分そうだ” といった韻踏みマスター桜井さんの覚醒ぶりはこの曲でも健在です。
9. We have no time
比較的テンポ感のあるブルージーな楽曲。
いつになく荒々しい桜井さんの歌唱からは、まだこんなに尖っていてセクシーな歌い方ができるのか…とビックリしましたね~。「十二月のセントラルパークブルース」が脳裏を掠めます。
現時点ではそこまで好きな曲というわけでもないですが、ここから次曲「ケモノミチ」への流れが秀逸。
10. ケモノミチ
9月16日に先行配信された、スリリングなアレンジメントが強い印象を残す楽曲。
序盤のいくつかの楽曲と同様にスティーヴやサイモンを招き『SOUNDTRACKS』体制での編曲・演奏がなされており、彼らの手腕による突き刺すようなストリングスアレンジが曲の持つシリアスさを最大限に高めていると感じます。
迫り来るような3連リズムは「NOT FOUND」を彷彿とさせますが、同曲とは違ってバンドサウンドではないところに今アルバムならではの方向性がよく表れていますね。
しかしアルバムリリース発表時のティザー映像だけだと、この曲が「I MISS YOU」なのではないかと誰もが思うよね…笑
11. 黄昏と積み木
ここまでの緊張感を和らげるようなハートウォーミングなラブソング。
ここからの終盤3曲がどれもスローで温かみのあるナンバーということもあり、唐突にアルバムの流れが変わった感覚を抱きますが、これは狙ったのでしょうか。
「水上バス」や「インマイタウン」辺りのメロウなアルバム曲が好きなリスナーならば間違いなく気に入るような、安心安定のミスチル節がここでようやく聴けてホッとしますね…笑
この曲は普通にバンド編成でもあり、田原さんのものと思われるエレキギターの音色にいたく感動を覚えます…
12. deja-vu
前曲に続き、温もりのある生楽器のアンサンブルに彩られたジャジーな楽曲。
サビメロに一瞬だけスピッツの「大好物」っぽい箇所があるような…次曲にも「雪風」と同じメロディーがあるので、意図的なものでしょうか。
山本拓夫、西村浩二の両名によるサックスやトランペット、フルートがささやかに華を添える上質なサウンドがたまりません。
他にも、この曲と次曲ではシンガーソングライターの小谷美紗子氏がピアノ演奏に参加しているとのことでした。そういえば数年前に対バンしていたよね。
13. おはよう
アート性が強く聴き応えに溢れたアルバムを締めくくるのは、生活感のある歌詞と上質なバンドサウンドが聴き手を温かく包み込むアコースティックナンバー。
個人的にはこれこそが今アルバムのベストトラックです。
どの箇所のメロディーも温かくて切なくて美しすぎて、聴いていて涙が出そうになるんですよね…。
2023年版『HOME』といえるような日常の風景を切り取った言葉が並んでいますが、この難解で苦悩に満ちたアルバムが《今日もきっと良い日だ》という言葉で締めくくられることに感慨深さを覚えるのは僕だけではないよね…!
決して派手ではないけれど、Mr.Childrenの良さが凝縮された珠玉の名曲だと思います。
この曲に出逢えて本当によかった。
というわけで…アルバム全13曲の感想を綴ってまいりましたが、いかがでしたでしょうか?
この記事が『miss you』を楽しむ上で少しでも参考となれば幸いでございます。
ここまでご覧くださいまして本当にありがとうございました!


